閉鎖病棟 (新潮文庫) 帚木蓬生 感想

閉鎖病棟 (新潮文庫) 帚木蓬生 感想

2010/03/09 2:00 neputa

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※hontoに電子書籍版あります。

あらすじ

amazon.co.jpより引用
とある精神科病棟。重い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。その日常を破ったのは、ある殺人事件 だった……。彼を犯行へと駆り立てたものは何か? その理由を知る者たちは――。現役精神科医の作者が、病院の内部を患者の視点から描く。淡々としつつ優 しさに溢れる語り口、感涙を誘う結末が絶賛を浴びた。山本周五郎賞受賞作。

感想

表紙、タイトルから精神医療の闇を語る作品と思い購入、初めて読んだ帚木作品。

物語としては、閉鎖病棟で過ごす様々な患者たちそれぞれの人生を鮮やかに描いた作品である。
登場人物たちがとても丁寧に、生き生きと描かれており、それぞれの個性に魅せられる。
時に喜び、時に悩み苦しみ、人間らしく生きる人たちの世界に引き込まれつつ、ふと気づけばそこは閉鎖病棟であったことを思い出す。

変に大げさであったり、患者の苦しみを仰々しく描写することはない、ごくごくあたりまえの人間達の営みを淡々とした筆致がとても印象的でたいへん読みやすい。


病院内で悲しい事件が起こる。男性に乱暴を受けたことがキッカケで入院していた女の子が、病院内の患者から同じ苦しみを受けるのだ。
そして、特に中心的に描かれているチュウさんという人物の言動に強く胸を打たれることになる。人間誰しも苦しみを抱えており、それを乗り越え自分の命と引き換えにする覚悟で勇敢な行動をとる彼の姿に、私は体が震え、号泣した。

精神の病を患い閉鎖された空間であるが、罪深い行動に駆られる者もいれば、人間愛に溢れるチュウさんのような人もおり、外の世界となんら変わることはない。本来の自分自身でいることができる場所と考えれば、病院の外の世界が閉ざされた空間なのかもしれない。そう思えるほどに、著者が描く患者たちの姿から「人間らしさ」というものを感じる。

著者は現役の精神科医とのこと。
本作品を通じて、著者が日々どのような目線で患者に接しているかが伝わってくる人間の持つ思いやりも残酷さもすべて包み込む、どこまでも深い著者の優しさに溢れた素晴らしい作品だった。

今まで読んだ作品の中で最も好きな一冊。

著者について

新潮社より引用
帚木蓬生 ハハキギ・ホウセイ
1947(昭和22)年、福岡県生れ。東京大学仏文科卒業後、TBSに勤務。2年で退職し、九州大学 医学部に学ぶ。現在は精神科医。1993(平成5)年『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞を受賞。1995年『閉鎖病棟』で山本周五郎賞、1997年 『逃亡』で柴田錬三郎賞、2010年『水神』で新田次郎文学賞を受賞した。2011年『ソルハ』で小学館児童出版文化賞を受賞。2012年『蠅の帝国―軍 医たちの黙示録―』『蛍の航跡―軍医たちの黙示録―』の2部作で日本医療小説大賞を受賞する。『臓器農場』『ヒトラーの防具』『安楽病棟』『国銅』『空 山』『アフリカの蹄』『エンブリオ』『千日紅の恋人』『受命』『聖灰の暗号』『インターセックス』『風花病棟』『日御子』『移された顔』など著作多数。 
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