アメリカの巨大軍需産業 (集英社新書) 広瀬隆 感想 | 読書感想BLOG
アメリカの巨大軍需産業 (集英社新書) 広瀬隆 感想

アメリカの巨大軍需産業 (集英社新書) 広瀬隆 感想

2015/01/27 9:06 neputa

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内容

戦争、紛争、そしてテロといった武器を用いた争いは止むことなく世界各地で行われている。しかし、そこで使われる銃や兵器は誰が作り、持ち込んだものなのか。
アメリカの30兆円にものぼる国防費を背景に、軍需産業は国家と固く結びつきマーケットを世界へと広げている。そのルーツは建国時代までさかのぼり、現在まで姿形を変えながら拡大を続けたアメリカの軍需産業を詳細に分析した一冊。
※数字は出版時2001年ー時事ドットコム:【図解・国際】米国防予算の推移

読書感想

先日読んだ「ヤクザマネー」(参照)に続き、「悪と仮面のルール(中村文則)」(参照) の参考文献をまとめ買いしたうちの一冊。

毎年、世界一の軍事費を投じるアメリカ。2014年は実際の戦闘で投じた戦費も含めると約60兆円、日本の国家予算の3分の2にも相当する。

巨額な予算にロッキード・マーティン、ボーイング、レイセオンなどの軍需企業が群がり国内外に武器を売さばいている。これはアメリカ建国当時から綿々と受け継がれてきたものであるという。
アメリカの国立銀行を設立した人間たちの性格は、現代アメリカの軍事的性格を物語る。建国史の裏面に、アメリカ経済・政治の中枢人脈と軍部の結びつきが今日まで続く本質的な要因が潜んでいる。

著者は、戦争、紛争、テロでの使用武器に関する報道についてこう述べている。
戦争と紛争があっても、そこで使用された武器と兵器のメーカー名を正確に伝えない報道は、ジャーナリズム最大の欠点である。
もし仮に、武器のメーカーが明らかになり、そのメーカーの主力工場はアメリカの何州であるか、その州を地盤とする議員は今どのポストにいるか、また彼らと同じ閨閥の人間はホワイトハウス、国防総省でどのような力をもっているかをたどれば、今起きている戦争が誰のためのものか明らかになる。

本作はこういった視点でアメリカ建国以降の戦争と、その時の政府、軍需企業、特務機関の人間構図を調査し、戦争と一体となりながら拡大成長したアメリカの姿を浮き彫りにする。
読み終えて強く感じたことは、戦争は無くならないということ。
ビールメーカーにとって毎年訪れる夏の季節が不可欠であるように、軍需産業にとっては「戦争」がまさにそれであるのだろう。戦争は富むための装置で、それはあまりにも大きい。

一度覚えれば誰でも扱える銃器が世界中にばらまかれ、特に紛争地には重点的に供給される。私のような庶民は、悲しみをもって民族紛争やテロのニュースを見ている。
しかし、軍需産業に関わる人間は別の視点で眺めているのだろう。彼らはきっと、紛争のコンディションを気にしている。

紛争が大きくなれば、そこに軍を送り込み最新鋭の兵器で一層される。
戦争は長すぎても短すぎてもいけない。
長すぎれば終戦後の需要の落ち込みが、短すぎれば投資を回収しきれない。

本を読んで、胃が空になっても吐き気がおさまらないことは初めてだ。
冒頭でも書いたが、中村文則さんが「悪と仮面のルール」という作品を書くにあたってこの作品を参考にした。そこには、人間の究極的な悪の存在が描かれている。

世界に大きな存在を確立した戦争という産業は、人間の、悪の側面を象徴するひとつだと感じる。

私にとって、とてつもなく好きなアメリカがある。アメリカ生まれの多くに感動し成長させてもらったと感じている。しかし、銃もまたアメリカにとって建国以来の象徴なのだろう。銃社会アメリカから銃を無くすことは、アメリカという国が姿を消すことと同義なのではないか。

光があれば闇があるように、まぶしく輝くその姿にはまた違った側面があることを思い知り、そう気分は真っ暗闇だ。昨日までとは同じ気持で世界を見ることができない、それぐらい衝撃の大きい一冊だった。
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