ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 スティーグ・ラーソン (ハヤカワ文庫) ー あらすじと感想

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 スティーグ・ラーソン (ハヤカワ文庫) ー あらすじと感想

2018/01/10 12:14 neputa

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あらすじ

  • 上巻より引用
宿敵ザラチェンコと対決したリスベットは、相手に重傷を負わせるが、自らも瀕死の状態に陥った。だが、二人とも病院に送られ、一命をとりとめる。この事件は、ザラチェンコと深い関係を持つ闇の組織・公安警察特別分析班の存在と、その秘密活動が明るみに出る危険性をもたらした。危機感を募らせた元班長は班のメンバーを集め、秘密を守る計画を立案する。その中には、リスベットの口を封じる卑劣な方策も含まれていた。

読書感想

読みどころ

  • 世界的人気を誇るスウェーデン発の長編ミステリシリーズ、ラストを飾る第三作目。シリーズはすべて映像化されており、小説・映画の両方で楽しめる。
  • 前作で発覚した人身売買の問題から国家ぐるみの陰謀へと話は広がっていく。スウェーデンの歴史背景や公安警察をも交えた壮大なミステリ劇。
  • 社会に対する強いメッセージ、緻密に練り上げられたストーリー、リアリティのある描写、魅力的な登場人物などなど、様々な良質な要素を最高の形でまとめ上げた稀に見る作品。

とうとう終わってしまったミレニアムシリーズ

「ミレニアムロス」である。

「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」から始まり、三部作を読了した現在、正直わたしは腑抜けた状態に陥ってしまている。それほどまでにシリーズを読んでいる時間が充実していた証拠でもあるのだと思う。

北欧スウェーデンを舞台とし、重厚長大な物語に魅力的な登場人物を配して描かれたこのシリーズは、これまで数々の「闇」を暴いてきた。

一作目では、40年に渡り社会的に弱い立場にある女性をターゲットに繰り返されていた殺人と、経済界を牛耳る大物の真の姿を暴き出した。

あらすじ 月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家の違法行為を暴く記事を発表した。だが名誉毀損で有罪になり、彼は『ミレニアム』…

二作目では、平然と行われてきた人身売買に切り込み、結果として国家の歴史的な闇へといたる。

あらすじ 女性調査員リスベットにたたきのめされた後見人のビュルマンは復讐を誓い、彼女を憎む人物に連絡を取る。そして彼女を拉致する計画が動き始…

ここまでくれば結末はある程度予想はつくのだが、それでも魅せる最終作。

狂卓に集まった騎士たちによる眠れる女「リスベット・サランデル」の救出劇により、シリーズは最高のフィナーレを迎える。

登場人物を整理する

新たなプレイヤ―も加わり、前作にも増して登場人物の数には悩まされる。
そして「グルべリ」「サンドベリ」「ホルムベリ」など、「ベリ」ってなんだ?という慣れないスウェーデンの人名が、人物把握をより困難なものにする。

ということで、簡単なグループ分けと、終盤まで登場する人物に絞って整理をしてみたい。


※終盤まで登場する重要人物は太字とした。

主人公

  • リスベット・サランデル
  • ミカエル・ブルムクヴィスト

リスベットの仲間

  • ホルゲル・パルムグレン (元後見人・弁護士)
  • プレイグ        (ハッカー仲間)
  • トリニティ       (ハッカー仲間)

ミカエルの仲間・ミレニアムのメンバー

  • アニカ・ジャンニーニ  (妹・リスベットの弁護士)
  • エリカ・ベルジェ    (共同経営者・愛人)
  • クリステル・マルム   (共同経営者)
  • モニカ・二ルソン    (従業員)
  • ヘンリー・コルテス   (従業員)

チーム・ミルトンセキュリティー

  • ドラガン・アルマンスキー(ミルトンの社長)
  • スサンヌ・リンデル   (従業員・エリカの警護員)

チーム・警察捜査本部

  • ヤン・ブブランスキー  (捜査責任者)
  • イェルケル・ホルムベリ (捜査員)
  • ソーニャ・ムーディグ  (捜査員)

チーム・公安警察

  • トーステン・エドクリント(憲法保証課課長)
  • モニカ・フィグエローラ (課員)

チーム・サールグレンスカ大学病院

  • アンデルス・ヨナソン  (外傷科医長・リスベットの執刀医)
  • イドリス・ギディ    (清掃会社の社員)

ザラチェンコグループ・クソ野郎ども

  • ザラチェンコ      (リスベットの父親)
  • ロナルド・ニーダーマン (ザラの部下・リスベットの兄)
  • エーヴェルト・グルベリ (公安分析班の元班長)
  • グンナル・ビョルク   (班の元メンバー)
  • フレドリック・クリントン(班の元メンバー)
  • ビリエル・ヴァーデンシェー(班の班長)
  • イェオリ・ニーストレム (班のメンバー)
  • ヨーナス・サンドベリ  (班のメンバー)
  • ペーテル・テレポリアン (精神科医・リスベットの元主治医)
  • ニルス・ビュルマン   (リスベットの後見人・弁護士)

敵対する検察・警察

  • リカルド・エクストレム (検事)
  • ハンス・ファステ    (刑事)

※ここからはネタバレが含まれています。

ミレニアム3の特徴と感想

シリーズを通して読んできた者にとって、この最終作における展開や結末はあらかじめ想像しうるものであった。

各場面においてハラハラドキドキさせられるが、そうでなければ困る、という方向に進んでくれる。

では予定調和で退屈かと言うとそのようなことは全くない。

ミカエルと一定期間仕事を共にした女性は何故か彼とセックスをしたくなる現象は相変わらず健在だ。

だが、予想はできていても、いざ目の当たりにすると動揺してしまうこと、というのは往々にして存在する。

シリーズを通じて掲げられたテーマである「女性に対する暴力」。これはつまり人権を無視されることにつながっている。その人権を事実上持つことができなかった存在として「リスベット・サランデル」が描かれてきた。

憲法があり法整備がなされた社会において、一市民として生活を送ることはなにも特別なことではなく、普通のことだと思っていた。むしろ意識したことなどほとんど無かったと言っても過言ではない。

女性に対する暴力からテーマは、国家が国家のために、意志的にひとりの市民を抹殺した話へと発展した。(結果として、ミレニアム2で掲げた「人身売買の告発」が影を潜めてしまった感は否めない)

リスベットという女性がたどった人生は、運命のいたずらなどという生ぬるいものではなかった。社会の犠牲者などと言い訳じみた物言いでは片付けられないものだ。だからキッチリと落とし前を付けさせてもらいまっせ、というのがミレニアムシリーズだった。

この作品はフィクションだ。
フィクションだが、さらにひどい話は世界中にいくらでも存在するだろう。

この手の話を聞くたびリンカーンの「government of the people, by the people, for the people」は、やはり幻想なのだと思う。国家はどこまでも国家であり、全国民の集合体とイコールであったことなど、これまでもこれからも無いのだと、ぽっかりとした虚無を感じる。

ミレニアムは、この現実世界を完膚なきまでにぶち壊してくれる。
そして、一度は国家に葬られたリスベットが無事に救済されることで、この世界に救いがある、という幻想を見せてくれる。

おびただしい数の登場人物や、読みにくい人名・町名などハードルはあるけれど、それらを乗り越えシリーズを読み終えたものには、恍惚としたカタルシスが待っている。


ミレニアム3の続編について

著者スティーグ・ラーソンは心筋梗塞により、ミレニアムシリーズの成功を目にすることなく亡くなっている。

しかし、第三部までを一区切りとして執筆した著者は、続編の構想をすでに思い描いており、彼のPCには草稿が残されていたそうだ。

ラーソンの内縁の妻だった女性と彼の親族は、ミレニアムの成功で転がり込んできた大金と草稿を巡り激しく争っている、と訳者あとがきに記されていた。この素晴らしい作品を生み出した著者の意志を、本人以外の者が主張し合うさまは悲しい現実だ。

他社の手によってミレニアム4と5が出版されているが、現在のところは読まないでおこうと思う。

著者について

  • 本書より引用
スティーグ・ラーソン Stieg Larsson
1954年スウェーデン北部に生まれる。スウェーデン通信でグラフィック・デザイナーとして20年間働き、英国の反ファシズムの雑誌『サーチライト』に長く寄稿する。1995年、人道主義的な政治雑誌『EXPO』を創刊し、やがて編集長を務めた。日に60本もタバコを吸うヘビースモーカーで、仕事中毒でもあった。パートナーである女性の協力を得て2002年から〈ミレニアムシリーズ〉の執筆に取りかかり、2004年に三冊の出版契約を結ぶ。2005年、第一部『ドラゴン・タトゥーの女』が発売されるや、たちまちベストセラーの第一位になり、三部作合計で破格の部数を記録、社会現象を巻き起こした。しかし、筆者のラーソンはその大成功を見ることなく、2004年11月、心筋梗塞で死去した。享年50。

訳者について

  • 本書より引用
ヘレンハルメ美穂
国際基督教大学卒、パリ第三大学修士課程修了、スウェーデン語、フランス語翻訳家 訳書『ミレニアム』ラーソン(共訳/早川書房刊)他
岩淵雅利
東京外国語大学大学院修士課程修了 訳書『アデル』ルグラン(共訳/早川書房刊)他

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